◆須藤克明
岡山県生まれ
平成元年:武蔵野美術大学大学院造形学部油絵学科修了
無所属無派閥
持論でありますが、我々美術を志すものにおいて、技術・技法・理論などは広く公開すべきものと考えています。例えば藤田嗣次の下地(キャンバス下地)は世界的に価値が認められているところですが、その下地に感心したピカソが、その技法を教えてほしいと尋ねたところ、それを断ったといいます。後世に、その技法は残っていません。そういった例は星の数ほどあるのです。
会社のような営利目的ならば、それは十分うなずける話ですが、我々の目的は美の創造であり、人類的に見たならば藤田からその技法を学ぶことによって、もしかしたら新しい美が、作品が、生まれていたのではないかと思うと残念なのです。
またこういう話もあります。彫り師の話ですが、一流の人達は自分の仕事道具と作業場を決して人に見せないと聞いています。道具や仕事場を見せると、まねられると思うのでしょう。ところが、これが超一流となれば話がまるで別で、仕事場は見せてもらえるし、道具をも見せてもらえるというのです。それどころか、道具の使い方まで説明してくれるというのです。
これは何を意味しているのでしょうか。一つには確かな自信が伺えます。同じものを使っても私と同じものはできない。正確に言えば究めた人達は自分の確固たる世界を持っていて、他人と比べたりせず自分の道を探究しているものなのです。そして、もう一つの見方として、自分と同じ道を進む人達に対して微笑ましく思い、暖かい目をもって応援してくれているのです。
できることであれば「人類の共通の美」に貢献できるようにと、私自身も考えています。